Casa VINITALIA
9 Ottobre, 2008



Il Vento dell’Alto Adige .8
〈南チロルの風〉



「失敗は成功の元」という言葉があります。

誰でも経験する様々な失敗は、
それぞれ深くも浅くも胸に刻まれている物だと思います。

本当に経験して良かったと思えるもの、
忘れたくても忘れられないもの、
人それぞれたくさんあることでしょう。

今回はそのようなお話です。



ミラモンティにいた1年の間も全く順調にいったわけではありません。
むしろ失敗の方が多かったくらいです。以前にお話しした
持ち回りサービスで、二人のお客様に連続してポレンタを粗相したり、
サーバーがうまく使えなくて人数分配れなかったりしたものです。

バックヤードでは11個の割合でグラスをバリバリ割ったり、
洗浄し終わったコーヒーカップをラックごと床に落としたりもしました。
さすがにあの時は社長から大目玉食らったのを覚えています。
これらは全て忘れたくても忘れられない思い出ばかりです。
しかしそういう時にこそ、自分で反省点を見つけ出せるわけであります。

「グラスの拭き方をこうした方が良かった」「次からサーバーをこうやって持てば安定する」
「洗浄用ラックの取り扱いは本当に気をつけよう」などなど、
それらはすべて当然のことなのですが、自分が見落としていた分、
さらに気を使い業務を完璧に遂行しようと思い直すことができるのでした。



そしてサービスにもある程度自信を持って訪れたサドレルでは、
全てできて当たり前というようなプレッシャーのもと業務が始まりました。
しかしそこは22歳。高く見せる無理な背伸びは長続きしません。
いくら夜中まで勉強をして知識を詰め込んだとはしても、
技術と経験が追いついていかないのです。


ある日アジア系のお客様が来店され、
山下少年をイタリアに連れてきたワイン、ソライアをオーダーされました。

サービス時に使用するワインバスケットというボトルを入れる道具があります。
別名パニエとも言うのですが、サドレルで使用していたパニエは金属製でできたもので、
ボトルを横にして置き、上から同じ金属製のもので挟むタイプのものでした。

新人の山下少年はそのパニエの取っ手の上部にある部分を
しっかりと下に抑えるか、またはその下の金具まではめ込むか、
どちらかしなければボトルが固定せず滑るということに気を使っていませんでした。

「このパニエはガクガク動くな、怖いな」なんて思っていたら案の定、
半分程度残したボトルをホールのど真ん中に滑らせてしまいました。
全身の血の気が引いて、そのお客様の方を見るとお客様も頭を抱えていました。

そんな時は本当に頭が真っ白です。

まずお客様にお詫びをして、服に粗相をしていないか確認を取り、上司に連絡。
社長のサドレル氏に
「パニエからボトルが落ちました、すみません。次のボトルを持ってきます。」と伝え、
社長は「お客様は2本目をお求めなのか?」と聞かれ「わかりませんが僕がお支払いします」と即答。
ワインセラーまで走ってボトルを取りにいく間、
悔しさがこみ上げてものに八つ当たりしたくなりました。

ディナーの楽しみにしていらっしゃったお客様の気持ち、
一生懸命このワイン作った造り手の気持ち。
それらを自分の不注意で台無しにしてしまった不甲斐無さ。
そして今頃割れたボトルを片付けてお客様へ再度頭を下げている
他のスタッフのことを考えると、本当に泣きそうな気分になりました。
急いで同じボトルを持っていくと、今から新しいボトルは飲めないということを
お客様から言われ、更に愕然としたのを覚えています。


「当たり前のことを当たり前にできる。それは意識の問題。」

私はこの経験により、ホールでワインを扱うことの重要性、
そしてお客様が来店されてお料理とワインを注文されるという
当たり前のことにしっかりと応える重要性を再度認識させられました。
それはそのお客様がその時間と空間にお金をかけているということ、
我々サービスはそのお手伝いをするということ。
つまり一期一会なのです。

それを意識の低さで壊してしまうのは大変残念なことです。
ただオーダーされたものをテーブルに持っていき最後にお会計して頂くだけでなく、
そこにその意識をどれだけ詰め込めるかが重要なわけです。


「誰でも完璧な人間じゃない」

しかしそんな大きな失敗をしてガクンと落ち込むと、
また再出発するのが怖かったり、トラウマになったりもしますよね。
そんな時、相方の福本伸也が
「魚買って来たでー!魚食おう!」と
近くの市場で買ってきたスズキを2・3匹買ってきて料理して食べようというのです。

料理経験のない私に「魚のさばき方教えたる」と言って包丁を持たせます。
刃の入れる場所から切り方を横で色々教えてくれます。
そして苦手だった骨から身を切り落とす時、
「バーッと一気にしっぽまで切る。魚をさばくときは勇気が必要なんや!」と
アバウトなアドヴァイス。
「おいおい、もっと詳しく教えてくれよ」とは心で思っても
「よっしゃ!勇気出していこうか!」と包丁を握り直します。


彼は、失敗を恐れずに勇気を出して前へ進めということを教えてくれました。
完璧な人間など存在せず、失敗をして初めてそこから考えて、そして再び前進する。
その為には自分の行いを見返し、そして再チャレンジする勇気が必要なのです。


この時のスズキは小さいトマトとオリーヴ、ケッパーと共に軽く煮込んで食べた思い出があります。
横には北イタリアの香り高い白ワインを添えて、南の料理と北のワインでイタリアを満喫していました。


ちなみにこの白ワインは以前レストランでサービスしたことのあるワインで、
ある日コルクスクリューを差し込みグルグルまわしている途中で
ソムリエナイフの柄の部分だけが取れてしまい、
お客様のテーブルの下へプロペラのように飛んでいった事故があったのですが、
忘れもしないその時のワインでした。

今となっては笑い話ですが、当時はその状況に驚き、
わけもわからずお客様に謝っていたのを思い出します。






今回紹介するワインです。

北イタリアを代表すると言ってもいいブドウ品種、ゲヴュルツトラミネール。
イタリア語でトラミネール・アロマティコと言います。

このブドウ品種はフランスのアルザス地方を始め、ドイツ、オーストリア、
スイスといったドイツ語圏で栽培されている他、東ヨーロッパのチェコ、
ハンガリー、ブルガリア、クロアチアなどでも栽培されている品種です。

しかしこのブドウの発祥の地はここ南チロル地方、
アルト・アディジェ州のトラミン村だと言われています。
イタリア語ではテルメーノという名前で、
私の住むメラーノから車で40分くらいのところです。

今回紹介するワインはそのトラミン村にあるワイン協同組合のヌスバウメルです。


このブドウ品種は元々糖度の高いブドウで、
地域内で一番最後に収穫される白ブドウ品種です。
その理由からエキス分もさることながら糖分、アロマの凝縮感がひときわ目立ちます。

このヌスバウメルとはトラミン村の上部にある
セッラという地区にある畑名で、700年もその土地で
ブドウが産されているという記録も残っているほど伝統ある畑です。

畑の位置するところは海抜350mから550mと標高の高い場所で、
寒暖の差により香り高く酸がしっかりのったブドウがつくられ、
そして渓谷の南に位置するガルダ湖から吹く風により
健全な状態で栽培育成することができる条件のもと、丁寧に育てられます。
またこのブドウの収穫を数週間遅らせて完熟ブドウにしてから、
甘口ワインを仕込む造り手もいます。


このヌスバウメルは収穫後、短時間のスキンコンタクト(果皮接触)を行い、
ステンレスタンク内にて発酵そして引き続き8ヶ月の熟成を行います。


このようにして作られたワインは、きれいな黄金色で粘性がある外観。
アルコール度数も15%と白ワインにしては非常に高く、
アロマも黄色いバラや南国フルーツなど甘いニュアンスの香りが特徴的。
ちなみに残糖度も他の品種と比べると36g/l高いのでよりアロマが強く感じられます。
味わいもまろやかな甘みから始まり、それと共にインパクトあるボリューム感、
引き続き程よい風味と酸味が後に続く感じです。
ここでもアロマが長く残り、飲み終えた後も鼻まで帰ってくるのが印象的です。


地中海風のお魚料理に合わせたワインですが、
白身のお肉または香りあるチーズなどにも合わせられるオールマイティーなワインです。
食前酒から食後酒までこの1本で通すのもいいかもしれませんね。

一時期ミラノではこの品種のワインに凝ってサービスをしていた時期がありました。
イタリア人にはこのようにアロマと骨格のバランスが取れた白ワインが
よく好まれるんだということをそのとき発見しました。




                                 Kallmuenz ソムリエ
                                                山下将士



"Nussabaumer" Gewurztraminer 2006, Tramin
-Alto Adige-

5200

数量:





次号へ続く⇒


〈Back Number〉
ご紹介文
Vol.1
Vol.2

Vol.3
Vol.4

Vol.5
Vol.6

Vol.7


Casa VINITALIA