| Casa VINITALIA | |
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| 11 Dicembre, 2008 | |
Il Vento dell’Alto Adige .10 〈南チロルの風〉 「出会いがあれば別れもある」 1年以上同じ部屋に住み、色々作って食べて、 ケンカもして笑い合った友人がレストランを去りました。 彼には野望があり、目標があり、 なにより今自分が何をするべきか常に考えていました。 その決断がある日実行されるのです。 友人とは同じ歳の福本伸也。 彼が次に見据えた場所はスペインでした。 彼は神戸生まれの神戸育ち。 女手一つで育ててくれたお母さんからこよなく愛されて育ち、 その環境が彼自身を面倒見のいい人間へと形成していきます。 自分の意見ははっきり持ちそれをはっきり伝えられる 芯の強い人間であり、礼節を忘れない。 とりわけ15歳の時から料理の世界へ飛び込んだ当時から イタリアに来るまで応援してくれた方で お師匠様と慕っているシェフのことは何度も聞かされました。 そしてなにより自分の心の支えでもある お母さんへの感謝の気持ちは、 直接的には口にはしないものの、 話をする彼の口調から十分に読み取れるほどでした。 しかし当時は感情表現がダイレクトな性格故、 それが原因で何度かケンカしたこともありました。 それは今から思えば常に情熱を持って何事にでも打ち込む 彼の性格が、ただダイレクトに伝わっただけで、 何も悪気があるものではありません。 どうしても個性が強いと他人とぶつかり合うのは避けられませんでしたが、 それでも同僚から慕われるのは、それらを含めた 彼という人間をみんな好きになってしまうからです。 彼は思ったことを口にする人間です。 他人のことも、自分のことも。 曲がったことが嫌いな彼は、 ちょっとでもさぼる同僚がいるとコテンパンに言い放ち、 反論できないほど落ち込ませます。 しかしちゃんとフォローも忘れず、最後には 仲良くなってその件は過去のものにしてしまいます。 社長のクラウディオ氏にも罵声を浴びたこともありました。 社長のやり方が気に食わなかったのか、 イタリア人にも引けを取らない語彙語調。 社長と一悶着あると数日間は口もききません。 しかしそのような中でもクラウディオ氏が営業中、 後片付けの忙しい最中お皿を洗っていると、黙って彼のそばに行き お皿を片づけたり代わりにお皿を洗おうとしたりするのはいつも福本でした。 彼がいつも一番はじめに社長に近寄り、言葉こそ発しませんが 「おっさん、俺が代わりに洗うよ」と態度で見せる。 それが、彼が色々なところで上司から好かれていた理由でもあると思います。 自分のことに関しては、戒めのように言い聞かせて、 それを実行しようと努力するタイプです。 「ああして、こうして、あんな風になってやる!見てろよ!」 と言わんばかりの口調で言い放ちます。 二十歳過ぎの少年たちが酒の場で口にするのは、 夢や希望ばかりです。 どこどこのレストランに働きに行きたい、こんなことやあんなことを 勉強したいというのを当時から色々話していました。 彼の場合、自分の目標や夢を他人に言い放った分、 後はそれを実行するだけと自分を自分で追い込み、 それに向かって突っ走るのが彼のやり方です。 ひとえに他人に厳しく、自分にも厳しい人。 ちなみに当時彼はイタリアの後にスペインへ新しい技術を勉強しに行き、 それからフランスへ伝統料理とその歴史、そして現代の斬新な料理を見に行くのと、 それからベルギーへチョコレートの勉強をしに行くと。 やけに現実味のある目標に非常に驚いた覚えがありました。 当時のスーシェフでもあったアルゼンチン人の友人にお願いして、 履歴書とあなたのお店で働きたいと言う文章をスペイン語に訳してもらい、 それを一枚一枚手書きで書き綴る日々が続きました。 ガイドで見つけた星付きレストランや最近注目の若手シェフが 腕を振るうレストランなど、10通近く送っていたように思います。 そしてその何通かは返事が返ってきました。 はじめのうちは残念ながらいい返答は貰えませんでした。 でも彼のポジティヴさは素晴らしい。 「こんなすごいレストランから断りの返事をわざわざもらえるなんて、 これは俺にとってはすごくいい経験だ!」 おそらく彼は、そのようなすごいレストランでは 何人ものコック志望から自分と同じように働かせてほしいと言う手紙を たくさん受け取っていて、普通は読まれもせずにくしゃくしゃと 捨てられてしまいがちなそれらの手紙を一通、一通返答してくれたという 当然の礼儀に、断られはしたけど自分の目に狂いはなかった、 このお店に手紙を出せて良かったと思ったに違いありません。 そしてその数週間後には本当にいい知らせがくることになります。 スペイン最高峰のレストランで、シェフのアンドーニ・ルイス・アドゥリス氏が 腕を振るうムガリッツに、研修生として働けることになりました。 喜び一新、その日から進んでスペイン語を使って料理器具や、素材名を覚えていきます。 常に目標を意識して、それに向かって今何ができるか常に考えて実行する。 彼は本質的な情熱もさることながら、同時に 冷静な目で客観的に自分を見ることができる人でもあります。 何が今必要なのか、何が足りないのか、 それを補う為に今何をしたらよいかと自然に考えられるのです。 それはキッチンの中でもよく見られます。 3分で料理が上がると言えば、3分で仕上げる。 それ以上でも以下でもなく。 それは3分以内でやってやるぞという情熱の中に、 冷静に作業全体の構成と内容を分析し、 頭の中で忠実に工程が出来上がっている証拠なのでしょう。 毎日変わる彼のコンディションも含めて、そのお皿の3分間なのです。 何人の人が彼のように情熱を持って料理に打ち込めるのか? 何人の人が彼のように冷静に物事を見ることができるのか? 何人の人が彼のように同僚から愛される存在でいられるのか? 何人の人が彼のように最終日の仕事が終わった後に 涙を流すことができるのか? 当時の22歳の彼が繰り出したこれらの現実はほんの一部でしかありません。 しかしその一部を共に生活をして見ることができた。 共に働きながら共感することができた。 言葉に見えないものをたくさん教えてくれました。 同じ歳なのに同じ歳に見えない彼の感性が、これからの 僕の人生にたくさんのヒントを与えた存在であったと言っても 過言ではありません。 マルペンサの出発ロビーで、 不安な気持ちを隠し笑顔で手を振った後の 大きな背中がそれを物語っていました。 と同時に彼とはこれが最後ではないと確信したのも事実です。 ◆ ![]() 今回紹介するワインです。 「食前を飾るお皿では酸味が必要だ!」 私が覚えている福本の名言です。 彼の哲学で食前酒同様、突き出しでは少々酸味のあるシンプルなお皿を 食欲促進の為に作り出そうと常に色々と考えていました。 そんな「彼」のようなワインを今回は紹介したいと思います。 イタリアが誇るフランチャコルタで、 白ブドウベースのスプマンテを産するカヴァッレッリ社。 同社のトップラインでもあるコレツィオーネ2000年。 このスプマンテはシャンパーニュで言うブラン・ドゥ・ブランという 白ブドウのみで作ったスパークリングワインと同様の製法で作られています。 シャルドネ100%で作られたスパークリングワインは、 なんと言ってもその酸味と繊細さが特徴と言えます。 レモンの皮のような色合いと艶があり、 細く均一に続く泡が見られるのが特徴。 グラスを鼻に近づけるとトロピカルな香りがグラスの中に広がっています。 時間が経つとナッツ系のロースト香が引き立ち十分な香りのバランスを取ってくれます。 味わいの印象は始めに感じる泡の柔らかさと 後味にかけて伸びてくる酸味と風味が全体をまとめてくれる感じです。 エレガントなタイプではあるものの個性がはっきりしていて 食前酒だけではもったいないほど。 お皿との相性も柔軟で協調性豊かなスプマンテ。 一風変わったキャラクターでありながら個人とうまくつながり合い、 次の段階への足がかりを作っていく。 鮮やかな印象を残していくこの一品。 どうも、福本と似たところがあると感じざるを得ません。 Kallmuenz ソムリエ |
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