Casa VINITALIA
14 Giugno, 2009



Il Vento dell’Alto Adige .14
〈南チロルの風〉


「まずは私の仕事を見てください」

2003年夏、カンカンと暑い日ざしが照らしつける中、私はメラーノの駅に立っていました。
数ヶ月前に「Dammi Tu」と言ってくれたオーナーシェフのルイジ・オッタイアーノ氏に
時間をとっていただき面接をしてもらうためでした。


ホールが回らないほど人が足りない状況ではなかったのですが、
ソムリエを増やしサービスの底上げを図ろうと言うのがシェフの考えだったようで、
もう一度会って話をしてみようと、幸雄さんを通じて日程など段取りをしてもらったのでした。


シェフと面接するにあたり、私の仕事経験、内容をだらだら口で説明するよりは、
実際に形に残っているものを見てもらおうと思い、サドレルで作成したワインリスト、
ワインの情報管理をのせたノートパソコンを携帯していきました。
実際に形に残っているものを見てもらうことで、相手方にとってのニーズと
私の能力の合致する点を、どこかしら見つけてもらいやすくなると思ったからです。

もちろんそれが全てではないことも事実です。
そこで働きたい、この技術を生かしてまた他の技術も勉強したい、
そのような情熱がなければワインリストも、ノートパソコンもただの荷物にしかなりません。
ひとえにそれらの付属品は自分を売るプレゼンテーションの一部の道具でしかないのです。


レストランに入りシェフを尋ねていくと、キッチンでは友人の
日本人コックさんたちと混じってシェフが仕込み作業をしていました。
挨拶をして入っていくと「よく来たな!」と温かい目で出迎えてくれました。
早速、レストランのホールに通してもらいいよいよ面接。


しかし第一声が「Dimmi tutto(じゃ、どうぞ)」という言葉。
これは日本の面接のように「どうしてこのレストラン選んだのですか?
前の職場ではどんなことをしていましたか?」というような質問されて答えると
言う形式ではなく、まずは全て喋らせるタイプなんだと感じました。
そのような状況にちょっと拍子抜けした感じではありましたが、
イタリア語で文を考えて喋ると言うのは苦手ではなかったので、
過去と現在、そしてこれからのことについて説明しました。


まずは持ってきたワインリストとノートパソコンを開いて過去の経験と仕事内容です。
カンティナ内の600種類のエチケッタを誰でも簡単に見つけられるようにした
システムの徹底化や、約8000本の本数をうまい具合に回すための工夫。
それには常にカンティナの状況を個人的に管理できるものとしてノートパソコンが必須です。
自分のアイデアを基に友人に作ってもらったデーターベースを利用して、
在庫管理、業者管理、発注状況と言うようなものを少しだけまとめていました。
それらをルイジシェフに見てもらいました。
そうすると、「このワインおいしいよな」といってご自分のふるさとの味、
カンパーニャ州のワインを指して私に言うのでした。パソコンにも興味を示しながらも、
やはりワインにも引かれていったシェフにとても好印象を覚えました。


そして次に、現在の状況について話をしました。
なぜこのレストランを選んだのか、なぜサドレルと言う大きな名前を捨ててまで
この小さな町でやっていこうとするのか、自分なりにまとめたことを説明します。


まずはやはり星にとらわれず、新しいところで自分の力を試してみたい
と言うのが第一の目的でした。
今まで見たことのない神秘的なホールに自分の仕事風景を重ね思い浮かべていたこと。
料理に勢いがあり、自分の食べた実感と他のお客さんの様子が心に残ったこと。
数ヶ月前に食べにきたときの周りのお客さんの様子は非常に穏やかで
楽しそうな様子であったことを思い出していました。
それらのレストランの「ハード」となる部分に自分が今まで経験してきた
接客と言う「ソフト」の部分を組み合わせてみたい、
そのようなことを切々と喋っていったのです。


それからいずれはこうなりたい、ああしていきたいと言う将来についての
自分なりのヴィジョンを伝えていきます。
基本的には自分の成長が第一に挙げられるのですが、
ただ自分だけではなく一緒に働いている仲間の成長であったり、
レストラン全体の成長のためにどうやって協力していくか、どのように自分が動くか、
そういう点を意識しながら業務に取り組んでいきたいと言うような内容を伝えました。
そのように思うスタッフが一人でも多く増えれば、お客様の評価は自然とよくなるはずですし、
何よりこの町を代表するレストランになるであろうと信じて、シェフにその旨を伝えました。

「でも言葉よりも何よりもまずは私の仕事を見てください」

この言葉が自然に出てくるほど、私はこのお店に魅力を感じていました。

私の話をひとしきり聞いた後、シェフが自分の話をしてくれました。
このレストランはどのようなタイプのレストランで、
どういう目的でやっていて、どんな仕事をしているのか。
オープンからそこまで時間が経っていない分、サービスの質の向上やワインリスト、
及びセラーの管理を徹底してほしい、そして忙しいときには
お皿の出し下げも手伝ってほしいと言うことを言われました。


優しさと情熱のこもった眼差しでそのようなことを言われると、
「いやです」なんて言う気になどなるはずもなく、
むしろ「この人の力になろう」と心から思えました。
よく眉間にシワを寄せた面接官が「英検何級?!」とぶっきらぼうに質問してくるような、
あたかも「うちの店で働かせてやってもいい」と威圧的な面接もあると聞きます。
しかし今回の面接はお互いに思いを打ち明けて、共感するのであれば一緒に働きましょうと
いうスタンスから入った実に効率的で新鮮な出会いの場となりました。


そこからは、開始できる時期や住む場所のことなど具体的な内容の話に移り、
少しキッチンの中を見学させてもらってからレストランを後にしました。


その日は幸雄さん宅へ泊めてもらうことになっていたので、
スーシェフの南原章二君と3人で酒を飲みながら
今日のことやメラーノの町についてなど色々話をしていました。
この自然にあふれた穏やかな町メラーノで、素敵なシェフの下、
2人は本当に生き生きと生活をしているのが伝わってきました。
彼らの料理への情熱、非常に多趣味な面など感心することばかりでした。
そして何よりルイジシェフについては口をそろえて
「あいつはいいやつだよ、あいつがいるからここにいるようなもんだけどね」と言うのです。
私が面接で思ったことを彼らも口にしてるのでした。


その2ヵ月後には私は再びメラーノに戻り、
正式にスタッフとしての新しい生活をはじめていました。










今回紹介するワインです。


130年もの歴史を誇るマストロベラルディーノ社は
カンパーニァ州を代表する造り手のひとつです。
オリジナルの土着品種にこだわり、10世代にも渡る家族の伝統も大切にしつつ、
技術面において革新的なものには柔軟な考えを持っている。
それがこの会社の哲学であるように思います。


伝統を大切にするという意味で、先代で9代目のアントニオ氏は
第二次世界大戦後、多くの農家がカンパーニァ州にもとからある土着品種から
外来品種への変換へ流れかけていたとき、近くのブドウ栽培農家を一つ一つ回り、
今ある土着品種を栽培し続けていこうと呼びかけて回った一人でもあります。

その為、今ではその土着品種の代表でもある、
赤のタウラジ、白のグレコ・ディ・トゥフォ、フィアノ・ディ・アヴェッリーノの
3つのワインがDOCDに認定されています。
これは技術改革もさることながら、当時のアントニオ氏の努力の賜物と言わざるを得ません。


今回紹介するタウラジ・ラディチ・リゼルヴァ1999
アントニオ氏もエノロゴとして活躍したワインでもあります。


全体に落ち着きのあるレンガ色で、凝縮感のある複雑なアロマからは、
乾燥フルーツや薬草を思わすキナの香り、タバコのニュアンスも感じられます。
味わいはインパクトのあるマイルドさが口に含んだ時から感じられ、
舌の中央から両サイドに抜けるタンニンと酸が長い余韻と共に口中に残る感じです。
ご自宅のワインセラーでゆっくり寝かせてから飲むこともできる
長期熟成タイプでもあるので、その違いを楽しむのもいいかもしれませんね。


そしてアントニオ氏は、息子で10代目のピエロ氏に引き継ぎます。
ピエロ氏はワイナリーに新しい風を吹き込みました。ピエロ氏がとった新しい行動は、
2006
年の12月に前エノロゴでもあるヴィンチェンツォ・メルクリオ氏との契約を終了し、
新しく醸造コンサルタントとしてボルドー大学教授のドニ・デュブルデュー氏を起用したことです。
ステンレスタンクやフレンチオークなどワインを作るための物理的な改革だけでなく、
実際にワインを造るエノロゴをイタリア人ではなくフランス人を選ぶという技術的な改革も行なわれました。
これらは相当勇気のいる決断だったと思います。

しかしその大きな決断にも家族の絆は崩れることはなく、
むしろ彼を大きく包み込み、支えているように感じられます。



Taurasi Riserva Radici 1999, Mastroberardino
-Campania-
¥5400 >>> 
DM特価 4800
 数量

                                   Kallmuenz ソムリエ
                                                山下将士



*King of Taurasi しかも最高の1999。
革新を続けながらも、伝統スタイル時代の1999を惜しげもなくリリースする。
スタイルが変わり残念がる私のような20年来のファンの気持ちつかんでいます。
今回、貴重な5リットル、合わせて入荷しました。
こちらは、年内お取り置きも承ります。  

                                田沢

Taurasi Riserva Radici 1999, Mastroberardino
(5000ml )
-Campania-
¥36700 >>> 
DM特価 30000
 数量



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