Casa VINITALIA
27 Gennaio, 2010



Il Vento dell’Alto Adige .15
〈南チロルの風〉


最後にコラムを書いてから半年近くの時間が過ぎました。
このコラムをご覧頂いている方には大変ご迷惑をおかけいたしました。

皆様から頂いたお時間の中で色んなことを考えて、色んな本を読んで、
何よりまた「書きたい」という気持ちが出て来るのを感じました。

前回までは接客業に就くところから、
イタリア修行の経過をちょうどメラーノまでお届けいたしました。
今回からは今のレストランについてと、この町についての様々なイべントや文化などを
レポートという形でお伝えできれば良いなと思っております。
どうぞお付き合いください。


200310月末、
秋の色も深まり山奥の町メラーノにはすでに冬の香りが訪れていました。
一時帰国を終えて新たな挑戦を目の前に意気込むその場所は、
このリストランテ・カルミュンツ。ここから皆さんにお届けする、
そしてタイトルでもある南チロルの風(情報、文化)が吹かれるのです。

しかし仕事が始まるにあたり誰にでも感じられる不安というのはあるものです。
私が感じた大きな不安はまずは言葉です。
イタリアとは言うものの、ここは南チロルという別名があるほどで、
チロルつまりはもともとオーストリア領でもあった土地。
そこはイタリアにしていながらドイツ語が常用語なのです。
スイスで働いていたとき少々勉強したドイツ語を接客用語として使っていましたが、
ほぼゼロからのスタート。ですが幸いなことに仕事はじめの時期が、
イタリア人が多く訪れるメラーノ・ワインフェスティバルに重なったので、
この忙しい時期に言葉で悩むことはほぼありませんでした。

しかしいずれにせよこのことは後々大きくのしかかる問題でもありました。
この話はまた後日。


そして二つ目の不安材料は制服がないことです。
つまり私服で仕事をするわけですが、そのセレクトは個人にゆだねられるわけです。
もちろん社長が求めるある程度の規律はあるのですが、
すべて自前で1週間着まわさなければなりません。
私は社長に聞きました。

「ミラノではソムリエのユニフォームを着ていました。ここでも着ていいですか?」
「いやいや、着る必要はない!」と一蹴。
その真意を尋ねると
「制服は働いている人間を一つに括ってしまい、
ある意味個性を薄くさせてしまうものだ。
ぼくはそれを好まない。一人一人が個性を出し合って、
尚且つお互いを尊重し合い、まとまっていくレストランでありたい。」
シェフが熱々と語るのです。

「それでは、スーツがあるのできれいなYシャツにネクタイをつける形でいいですか?」
と尋ねなおすと、「いや、ネクタイも要らない!」あらそうですか。
ある意味、お客様に硬いイメージを与えないカジュアルな路線で、
それでいてエレガントな着こなしが求められているのだと理解をしました。
制服制度は組織の統一性や、そこで働くスタッフの仲間意識を
強く持たせるというように、それなりにいい面もあります。
しかし社長の考えも当時の僕には新鮮で、
「じゃあそれに対応できるように服を揃えよう」と思えたのでした。

結局、黒のスーツにストライプやチェック柄のシャツを着て、
上のボタンをはずしカジュアルなスタイルで仕事が始まりました。


「一難さってまた一難」

僕はまったくサービスにおいて、
いわゆる技術が長けている人間であるとは思いませんが、

こんなサービスを受けたら嬉しい、見ていて楽しいと
思うようなサービスは常に
追及していきたいと勤めていた人間なので、
ここで一つのカルチャーショックを受けたのです。


それはサービス=(イコール)皿を持っていくだけの作業と理解をして
働いている姿勢が見られたことです。

確かにレストランのホールで働く仕事とは、
お客様がオーダーしたものをテーブルにお届けする仕事です。

しかしその中で、そのお皿に対する思いやりや
自分なりの味の解釈をお客様に口頭で伝えることにより、

デクパージュやデカンタージュのようなビジュアル的に楽しめるサービスの技術以上に、
心に伝わる精神的満足度の高い接客が得られるものだと思うのです。

ただそれを「仔牛のフィレ肉です」とか「黒鯛です」など
メニューに書いてあることを暗記してセリフのように言えることは基本ですが、
それ以上に「トスカーナのオルベテッロ産の黒鯛を使っておりまして、
味付けは豆腐と香草のソースと共に召し上がっていただいております。
付け合せのお野菜と共に味わって頂くとまた違った味わいになりますよ」と
そのお皿を自分なりに解釈してそれを伝えられれば、
お客さんの印象は俄然変わってくるものだと思います。

おそらく日本のレストランではどこも普通に行われているサービスが、
ここ山の中メラーノでは社長の求める
「パーソナリティサービス」からはほど遠いものでした。


当時いたメートル(サービス責任者)はイタリア人の女性で、
気の合うお客さんがいれば長話してしまい、
業務がうまく遂行されないことが度々ありました。


彼女の下にはハンガリー人の男の子とポーランド人の女の子がおり、
二人ともレストラン業に就いたのが初めてでした。
シェフからの念入りなサービス教育が施されたのにも関わらず、
目に付くこと目に付くこと明らかに具合の悪いものばかりでした。
ハンガリー人の男の子はとりわけメートルとの肌合いが悪く、
お互いがお互いの悪口を言う始末。

そうなると機嫌が悪くなり険悪なムードでお客さんを迎えるわけであります。

ポーランド人の女の子は、イタリア語が苦手なのですがひたすら一生懸命。
しかし技術の限界を目の当たりにすると営業中でも涙ぐんでしまう子なのでした。

そんな彼らに朗報か否か、女性メートルが1年で辞めることになり
その代わりを私が引き継ぐことになったのです。

ソムリエからメートル。

やれないことはないけど、やるに少々ためらう年齢25歳が下した判断は、
「一生懸命がんばります」

まずはオーダーテイクや顧客フォローなど個人の課題以上に、
彼らの2人の長所、短所を見つけて、
長所は伸ばし、短所は克服することに勤めました。
そして前述した「パーソナリティサービス」の徹底化。

それを広めるために私が行ったのは、
まずは自分が率先してそういうサービスを示していくことでした。
彼ら2人に率先して「私ができるパーソナリティサービス」を見せることにより、
彼らも今までやったことのないサービス方法を自分なりに解釈して、
また彼らのサービス方法を見つけてもらうように心がけました。

そんな中でも私がとりわけ気に掛けたのは、
彼らが私よりもこの職場の先輩だということです。

経験や知識があっても彼らのほうがこのレストランのことはより多く知っていていますし、
そんな彼らを下に見るようであればきっとついてきません。
なによりやる気をなくしてしまうかもしれません。

彼らより私のお給料が少ないのも知っていながら、
営業中は彼らのフォローに回りながらも自分の仕事を遂行し、
時にはアドバイスのようなものもしたのでした。
時には声を上げて言い合ったこともあります。
ミラモンティ、フランチェスコ氏譲りの罵声をぶつけ合ったものでした。

しかしそこは私の失態。
上に立つものは常に冷静さを欠いてはいけないのについ感情的になり、
言いたくもない罵声を投げかけたのでした。
すべてはこのレストランのため、シェフ・ルイジのため、
そして私自身のために毎日の業務に取り組んでいくしかないのでした。

そんなある日、ポーランド人の女の子が
楽しそうに明るくイタリア語で「ネロダヴォラ」を注いでいる様子を見ました。

常連さんなのですが、きちんとワインの生産者や
特徴も自分なりにわかりやすい単語で説明していました。


テーブルクロスを汚すことなく最後までやり遂げた彼女の顔は充実感で一杯でした。
それだけでなく自分でデザートワインの販売もして
きちんとテーブルまでサービスしていたり、

あるお客様は名前で彼女を呼んでいたりと明らかに違う姿を目にしたのでした。

ハンガリー人の男の子は、相変わらず気性は激しいものの、
決して機嫌の悪さをお客様には見せずいい笑顔で迎え、
ドイツ語のオーダーテイクも自信を持って行い、
妊婦のお客様には常温のお水と冷たいお水をどちらがいいか伺い、
誰も何も言わないのに一人で判断してサービスをしていました。

メートルを引き継いでから数ヶ月。明らかな変化でした。
ここで彼らはシェフの求めた「パーソナリティサービス」を
完全に遂行することができました。


私がシェフの立場に立って考える「パーソナリティーサービス」とはつまり
商品同様に自分の個性も売るというオリジナルサービスではないでしょうか。

オリジナルサービスを求めるがゆえに
レストランに帰ってくるお客さんもきっといると思います。


京都に住む伯父の言葉を思い出します。
「山下将士がいるからこのホテルへ来るんだ、そんなお客さんを増やせ!」









今回紹介するワインです。

今回紹介するワインはシチリア州の代表品種、ネロダヴォラを紹介します。
生産者はリカルド・コッタレッラ氏がコンサルタントを行っているモルガンテ社。


以前同社のドン・アントニオを紹介しましたが、今回はその弟分に当たるワインです。

このネロダヴォラの起源は、シチリア南部にあるといわれています。
もともとこの品種はCalabreseカラブレーゼと呼ばれていました。
ですので起源はカラブリア州かと思われますが、
実はシチリア弁でCalaurisiカラウリジと呼ばれていたのが本当のところです。
Calaとはブドウという意味で、AurisとはAvolaアヴォラ地区を指しているとのこと。
つまりはシチリア南部のシラクーザ県の地域を指し、
その地域のブドウであるという意味になります。


ネロダヴォラはシチリア全土、とりわけ南部から西部にかけて栽培されており、
タンニンや肉付きが良く熟成に耐えうる力強いタイプと、
果実味豊かで気兼ねなく飲めるフルティータイプが作られ、
今回のワインは後者のタイプに当たります。


色合いは濃いルビーレット、粘性は中庸で縁にはまだ赤紫色が残る。
香りはチェリージャムやブルーベリージュースの果実香に百合の花、
バルサム、またはキニーネのように華やかに複雑実を加えたような印象。
味わいは疲れなく飲めるボリューム感と酸味、タンニンのバランスが特徴的。
全体的にボリューム感、マイルド感が先行しているが、
後味にまで伸びていく酸味、ミネラル、タンニンがバランスよく、優しい感じ。


ある有名な醸造家が、
イタリアを代表する3大ブドウ品種にネロダヴォラを挙げました。
ちなみに他の二つはネッビオーロとアリアーニコですが、それだけ
ワイン醸造のプロから見ても個性的で魅力的な特徴を持った品種といえます。
そんな魅力に引かれて、とりこになったワイン通の方も多いのではないでしょうか。
その原点ともいえるモルガンテ社のネロダヴォラ、
初めて飲む方も久しぶりに飲む方も、
もちろん毎日飲んでいらっしゃる方も楽しめると思います。


今では一児の母でもある元同僚でポーランド人の女の子。
今は国に帰りお父さんのお手伝いをしているとのこと。
彼女が見せた素敵な笑顔の先には、このワインを飲んで
食事を楽しんでいらっしゃったお客さんがいたんですね。


 Nero d'Avola 2006, Morgante
-Sicilia-
¥2410 >>>  特価 2160
 数量
* 箱割も好評につき引き続きやっています。
箱割ページはこちらから。


                                   Kallmuenz ソムリエ
                                                山下将士


                               



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